真っ黒な夜の底の白いシーツの残骸の中に熱を持った体が二つ。
私と彼と。余韻を楽しみたくて話しかける。
「月くん」
「ん」
少し掠れた声と私を見上げる幼い顔つき。あれほど乱れたとは思えないほどの無垢。
「私、今迄結構大勢の女性と枕を交わしてきたと思うんですが」
「・・・は?」
何言ってるの?という剣呑な目つき。
その剣呑さは嫉妬故と思いたい私は少し馬鹿な大人だ。
むしろ彼の潔癖のせいだと知っている私は少し汚れた大人でもある。
「古風な表現でオブラートに包んだつもりか?」
「あ、ばれましたか」
「今迄いろんな女とやってきた、って言えば?はっきりと」
「君には下品な言葉遣いが似合わないと思っていましたが・・・」
少し思案して微笑んだ。
「実際に君のその唇が紡ぐと結構興奮しますね」
恥ずかしさか不快さか、瞬時に彼は瞳を眇めて、体を反転させて背を向けてしまった。
「こっちは興ざめなんだけど・・・」
「すみません。でも話の途中なんですが」
そう言いながら無理やり肩を掴んで自分のほうへ反転させる。
枕を抱き込みながら上目遣いに睨みあげる彼が可愛い。
「こんなに気持ちがいいのは月くんが初めてです」
「・・・」
何かを言いかけて口を開いたようだが声にならないで閉じてしまった。
赤に染まった頬が可愛い。
「月くんはどうですか?」
今までの調査結果から品行方正な彼があまり経験がないことを知った上で(恐らく私が初めてだ)、聞いてみる。
「馬鹿!し、知るかそんなこと。」
怒鳴りながら振り上げた手を素早く掴んでベッドに押し付けながら、「もしかして私が初めてですか?」と聞いたらもっと怒るかな、と考えたら益々楽しくなってきた。
まだ眠れそうにない。
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竜崎は大人だと確信しています。
大人であることをアピールするつもりが、セクハラに。。
しかしこんなことを言う男はもてないですね、確実に!
#1 とついてますが、続き物ではないんです。
単なるピロートークっていうのを短めでいくつか思いついて
いちいちタイトル考えるのがめんどかったので。雰囲気短文。